間引菜の三を二にして一にする        広上 正市

間引菜の三を二にして一にする        広上 正市  小さな野菜の種を三粒ほどつまみ、僅かなスペースにまとめてぱらぱらと蒔く。やがて芽生えてくると、三つの芽のうちの一番成長の悪いのを抜く。またしばらくして、残りの二本から弱そうな一本を抜き、元気のいい最後の一本だけを残す。その抜かれる方が「間引菜」(秋の季語)である。  抜いたものは味噌汁に浮かせて頂いたりするのだが、生存競争を見るようで、何とはなしの哀れさがつきまとう。それともう一つ、プランター栽培程度では楽な作業だが、ちょっとした広さを持つ菜園だと腰をかがめて一本一本抜いて行く間引きが、それはそれは腰に堪えるのだという。  そんな作業を「三を二にして一にする」と、まことにドライに詠み切った。考えてみれば、句の内容は間引きの作業そのものであり、普通なら芸のない表現ということになる。しかし野菜を育てることの本質を知れば、名優の演ずるような「無表情の芸」が、この句から見えてくるのではないだろうか。(恂)

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