黄落や木道一本燧岳           野田 冷峰

黄落や木道一本燧岳           野田 冷峰 『この一句』  鳩待峠から尾瀬ケ原に入ると、北東方面に木道が一筋、延々と続いている。約六キロ、行けど行けども真っ正面に燧岳(ひうちだけ、正しくは燧ケ岳)が聳えていた。かなり昔の記憶だが、地図や写真で見る限り状況に変わりはないようだ。時は秋、尾瀬の湿原は草もみじの黄金色に染まっていた。  最も人気の高い水芭蕉の時期にも行ったことがあるが、あまりにも人が多く、山小屋ではすし詰めの大部屋で寝るなど、印象はよくない。それに比べると山小屋を締める前の十月の尾瀬はまさに爽秋。湿原地域を過ぎれば、豪華な紅葉・黄葉の林が続き、忘れようにも忘れられない風景であった。  そんな体験もあって、句会でこの句を見たとたん、選ぶことを決めた。あの時は燧岳に登り、頂上から尾瀬全体を見下ろした。その後、ずっと尾瀬へ行きたいと思っていたが、「燧岳は無理か」から、最近は「木道も長いなぁ」に変わった。毎年、秋が来れば思い出すのは、燧岳に向かう一筋の木道である。(恂)

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