枝豆や昔はどこも子沢山            金指 正風

枝豆や昔はどこも子沢山            金指 正風 『この一句』  戦後の、東京五輪がやってくる以前だろう。あの頃、貧乏の子沢山は当たり前だった。わが家は五人兄弟だったが、近所にはそれ以上の家がたくさんあった。母は家事だけで手一杯で、父が一人で家計を支えていた。夕方、買い物に出る母は時々、枝葉つきの枝豆を買ってきた。  子供心に、何であんなものを買ってくるのか、と不満だった。枝から外し、塩ゆでしたものを食べさせられたが、あまり好きにはなれなかった。そうか、あれは父親に食べさせるためだったのか、と気づいたのは、サラリーマンになり、酒場へ出入りし始めてからだった。  句会の後は馴染みの店で一杯やるのが通例である。「とりあえずビール」「とりあえず枝豆」も通例だ。東京で食べる枝豆はさほど美味いものではないが、ビールには確かには合う。枝豆をつまみながら、上掲の句を思い出していた。私はちょっと口数が少なかったかも知れない。(恂)

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