新涼や身離れのよき魚の骨           佐々木 碩

新涼や身離れのよき魚の骨           佐々木 碩 『この一句』  俳句会最高の賞「蛇笏賞」を受けた著名俳人がかつて、こう語っていた。「私は取合わせの句がどうしてもうまく詠めない。これから勉強していきたいと思う」。受賞時の年齢は八十歳を越えていたはずだ。その後に努力されたかも知れないが、取合せの名手にはなれなかっただろう、と想像している。  「取合せ」とは異質な事物を一句に並べる作り方で、古来、俳句の重要な手法になっている。例を挙げれば上掲の一句だ。「や」という切れ字を挟んで「新涼」と「身離れのよき魚の骨」が並ぶ。「新涼に何で魚の骨?」の声はあっても、「素晴らしい。これぞ取合せの句」と評する人が多いのではないか。  何の関係もなさそうな二物の取合わせが、句を作るコツである。しかしそのことを知っていても、いい句はなかなか作れない。この句を見て私は「素質がないとダメかな」と思った。なぜなら私は「新涼」に「魚の骨」はまず思いつかない。ところがこの句は、まさに新涼、と思ってしまうのだ。(恂)

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