信濃川町を分ちて秋の雲   岩沢 克恵

信濃川町を分ちて秋の雲   岩沢 克恵 『この一句』  信濃川は全長367㎞、日本最長の大河である。甲斐(山梨)・武蔵(埼玉)・信濃(長野)の境にそびえる甲武信岳(2475㍍)の長野県側斜面を源流とする千曲川が佐久平、上田平を北流、善光寺平(長野市)の川中島で中部山岳地帯を源流とする犀川と合流、新潟県に入って信濃川と呼び名を変え、十日町、長岡、燕三条などを通って新潟市で日本海に注ぐ。  この句は信濃川だから新潟県のどこかの町を詠んだものであろう。ただし、長野県境を越えたばかりの山間の町ではなく、かなり大きな町をゆったり流れる信濃川の姿を詠んだのではないか。もしかしたら新潟市の萬代橋あたりの景色かもしれない。新潟市はこの信濃川と阿賀野川というもう一つの大河を併せ持つ水の都である。  大河が北陸一の町を二つに割って悠々と流れている。真っ青に晴れ上がった秋空には大きな鰯雲が広がっている。「景の大きな句を詠もう」などと大向受けをねらう邪気は毛頭無く、「町を分ちて」と眼前の光景を素直に詠んだところが実に心地良い。気持がどんどんふくらんで来るような句である。(水)

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