電線の影をも探す酷暑かな           渡辺 信

電線の影をも探す酷暑かな           渡辺 信 『季のことば』  「暦の上では」を付けても、「いまは秋」とは言いたくない。夏の間よりも、立秋の後の方がずっと暑いのだ。俳句をたしなむ身であっても、「まだ夏なのだ」と、本気で開き直りたい気がする。子供の頃のように夏休みの間は、つまり八月中は、夏とみなした方が実感に合うことは間違いない。  この句は八月後半になってからの句会に出されたが、「分かるなぁ、この気持ち」「本当に句の通りだよ」といった同感の声が相次いだ。実は私(筆者)も炎天下で影を探している一人だ。ただし電線の影ではあまりにも頼りなく、せめて電話線ならば、と情けないことを考えながら歩いている。  ところで「酷暑日」の他に「猛暑日」という呼び方がある。ともに最高気温35度以上の日を言うのだが、猛暑は気象庁が、酷暑は主に新聞などが用いているという。気象庁の用語であるなら、そちらの方が公式用語なのかも知れない。しかしどちらが暑そうか、と言えばもちろん「酷暑」の方である。(恂)

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