萩揺らし川岸急ぐ宅急便   岡田 臣弘

萩揺らし川岸急ぐ宅急便   岡田 臣弘 『この一句』  萩の咲く頃ともなると、さしも猛威を振るったお日様も陽射しを少し弱めて、時折涼しい風も吹く。町行く人々もほっと一息ついて生気を取り戻す。今日はちょっと時間があるから少し歩いて、あの美味い蕎麦屋に行ってみよう。きっと新蕎麦が出ているだろう、そんな気分にもなる。  川岸の道をぶらぶら歩いていたら、後ろから息せき切って駆けてきて、追い抜いて行ったのがいる。クロネコの兄さんだった。涼しくなったというのに、汗をだらだら掻いている。すぐ横に萩の花が今を盛りと咲いているのだが、そんなものは全く目に入らない。思えばあの兄さんはいつも汗掻いて息を切らしている。ノルマなのか、大量の荷物を積んだ車を停めては荷を横抱きに走り、戻って来るや車を50メートルほど動かし、また荷物を抱えて走る。懸命に働く姿にはつくづく感心するのだが、見ているうちに何だか暑さが戻って来た。  日常の一点景をうまく詠み止めた佳句である。萩と宅急便の取り合わせが意表をつき、新鮮である。(水)

続きを読む