心まで茹であがりたる大暑かな       須藤 光迷

心まで茹であがりたる大暑かな       須藤 光迷 『季のことば』    このところ全国的に「経験したことにないような暑さ」が続いている。温度計を炎天のアスファルト路上に持ち出して計ったら、東京でも四十一度だった。「いま、四万十の人は同じ暑さの中にいるのか」と、妙な共感を覚えた次第だが、暦の上ではすでに秋。気温と暦の食い違いをどう考えたらいいのか。  「大暑」は二十四節季の一つで、辞典・歳時記などでは「暑さの最も厳しい時期」とあり、太陽暦で言えば七月二十二日は二十三日頃にあたる。もし今まで、この時期の句会に大暑の句を出したらどうか。歳時記至上主義の季節感によって、「もう秋ですよ」なんて注意されていただろう。  この句は現在の実感をそのまま句にした――と言いたいところだが、実は句会に出されたのは七月初旬のこと。そのころもけっこうな暑さではあった。しかし今ならさらにぴったりで、作者に「全くだ」「この通り」と同感の握手を求めたくなる。合評会などでは本質的な季語論を巻き起こしたかも知れない。(恂)

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