籐椅子や遠くから呼ぶ友の声   笹本 塘外

籐椅子や遠くから呼ぶ友の声   笹本 塘外 『この一句』  身体をすっぽり包む籠状のものでも、あるいは寝そべることのできる長椅子タイプでもいい、とにかく籐椅子に丸まったり寝転んだりすると、身も心もほぐれる感じがする。涼風の通うバルコニーか、広々したベランダか、籐椅子にくつろいでいると想念がどんどんふくらんで行く。  この句は、読む人によっていろいろな場面が思い描ける。突拍子もないようだが、リヴィエラからコートダジュール一帯の地中海高級保養地の海浜風景ととってもおかしくない。日覆いつきの籐椅子に寝そべっていると、遠くから「早くこちらにおいでなさいよー」と呼ぶ声がする。この友はもちろん異性の友であろう。ロマンチックで明るい情景だ。  一方、緑陰の籐寝椅子に横たわっているところとも受け取れよう。この場合の友は既にこの世にはなく、作者の心の中だけに住んでいる人ではなかろうか。半醒半睡、来し方のあれやこれやを頭の中に駆け巡らせているうちに、肝胆相照らす仲だった相棒の懐かしい声が聞こえてきたのだ。(水)

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