ハンカチに毛虫の落ちて恋成らず   高瀬 大虫

ハンカチに毛虫の落ちて恋成らず   高瀬 大虫 『この一句』  漫画のネタに使われる素材である。上品で謹言居士の宗匠がでんと座る句会にこんな句を出したら、誰も口をつぐんでしまい、一座は水を打ったようになり、宗匠の表情を上目遣いにうかがったりするに違いない。しかし、俳句振興NPO法人双牛舎で行われる番町喜楽会という融通無碍なる句会には、こういう句が大手を振って出て来る。そして、一座は「ははーん、そういうこともありましたなー」などと、にこやかに受け入れる。  恋い焦がれた彼女をようやく誘い出すことに成功した彼氏、いそいそと公園のベンチにハンカチを広げ、ささ、どうぞと手を差し伸べた途端、ものすごい毛虫がぽとんと落ちて来て「きゃー」。──正直言って、このギャグはあまり上等とは言えない。ありふれていて、使い古された感じがある。  しかし、この「使い古された」というのは、裏を返せば万人がそうした経験ないし知識を持っていて、一読理解出来る事であり、これが佳句の条件の一つでもある。あとはその料理法。この句は、自らの体験に裏打ちされているようなところもうかがえて、素直に笑えるのが救いであろう。(水)

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