向日葵や静まりかへる老団地   大石 柏人

向日葵や静まりかへる老団地   大石 柏人 『この一句』  団地の中庭の植え込みに、向日葵がすっくと立って元気よく咲いている。しかし、あたりはしんと静まりかえって、まるで人の気配がしない。向日葵がはなやかで賑やかなだけに、この静けさがなんとも異様に感じられる。  もちろん無人というわけではない。空き家が目立つようになったとは言え、居住者はそこそこいる。しかし、その多くは年金暮らしの老夫婦世帯で、日盛りの日中は室内に閉じこもっている。したがって日中は一見無人区域の様相を呈する。作者はそれを「老団地」と言う。  高度成長時代、首都圏郊外には続々と大規模団地が造成され、地方から上京して就職し家庭を持った若夫婦が住み着き、子供を産み育てた。団地は赤子の泣き声や子どもたちの歓声に沸き返り、まさに輝く向日葵のような、溌剌たる空気に満たされていた。やがて子供たちは成人し巣立って行き、老夫婦が残った。中には連れ合いを亡くした独居老人も少なくない。年々歳々、誰が植えるのか向日葵だけが旺盛に育ち花咲かす。年寄りにはちょっと眩しすぎる大仰な円盤花である。(水)

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