飛魚(とび)の群れ青空の底一直線      直井 正

飛魚(とび)の群れ青空の底一直線      直井 正 『この一句』  作者の視座はどこにあるのだろうか。飛魚の群れが一直線になって飛んでいくのが「青空の底」なのだ。あたかも上空から眺め下ろしているかのようで、作者はこの時、どこにいたのだろう、と考える人がいるかも知れない。しかし私は一読して、そうだ、この句の通りだ、と思った。  私が飛魚を何度も見たのは伊豆七島航路の客船のデッキからであった。飛魚は海面すれすれに飛んで行く。船上からだと、完全に上から見下ろすことになる。下のデッキでも海面から七、八叩∈脳絣なら十辰砲呂覆襪世蹐ΑH魚の群は背を見せている。波に触れたかと思うと、また飛んで行く。  作者も客船のデッキから飛魚の群れを眺め、空から見下ろすような気持ちなったのだろう。俳句ではときどき「空の底」「朧夜の底」のような表現に出会う。ちょっと気取った感じがあり、個人的にはあまり好きではないが、この句の場合は成功したと思う。飛魚ならば、まさに「その通り」だからである。(恂)

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