愛犬も更衣どきくしけずる          竹居 照芳

愛犬も更衣どきくしけずる          竹居 照芳 『この一句』  鳥獣はこの時期、冬毛から夏毛になる。雪の世界の白から茶色や黄色などへ劇的に色を変えるタイプもいるが、多くは密生した毛を夏に相応しくすっきりした毛にしていく。ペット類ももちろん毛換わりの時期を迎えるので、飼い主はきれいな毛並みにしてやろうと、ブラッシングに励むことになる。  そんな時、普通ならペットに愛情を向けるだけだろう。ところが俳句に馴染んでいる人は、自らの更衣にも思いが及ぶ。「お前は更衣の時期を迎えたのだな。私も半袖シャツで外出してみようかな」。更衣という季語によって、飼い主と愛犬はより深く心を交わすようになるのではないか。  人間も大昔は”毛物”であった。冬になれば柔らかな長い毛をまとい、夏になればそれを脱ぎ捨てていたのだ。ところがいつしか裸虫(人間の異称)となり、衣類を作り出して季節の変わり目に着替えるようになった。作者は愛犬をくしけずりながら、人類のやって来た道に思いを馳せている…のかな? (恂)

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