茶摘唄富士は世界の山となり   大石 柏人

茶摘唄富士は世界の山となり   大石 柏人 『季のことば』  「夏も近づく八十八夜野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘ぢやないか 茜襷に菅の笠」。明治45年(1912)に発表された文部省唱歌「茶摘」だが、誰が作詞作曲したのか分からない。けれども未だに廃れずに、現代の子どもたちも知っている。とても明るくて調子のいい唄だからであろう。  茶は生糸と共に近代日本を支えた重要輸出品で、日本を列強の一角にのし上げた立役者である。京都の宇治、福岡県の八女など各地方に大昔からの茶所があったが、幕末維新に富士山の裾野、静岡県で大々的に生産されるようになって、一気に日本の輸出の中心品目にのし上がる。富士を背景に広大な茶畑というのが静岡県の代表的な風景になった。この句の作者は生まれも育ちも静岡。茶摘唄に慣れ親しみ、霊峰富士の申し子のような人である。  そのフジヤマが今月末にも世界遺産として正式に登録される。そんなものに指定されずとも富士山は超然としているのだが、ユネスコから改めて世界遺産と言われれば土地っ子としては悪い気はしない。子供のように喜ぶ詠みっぷりが微笑ましい。(水)

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