黴臭き畳表や一人旅   加沼 鬼一

黴臭き畳表や一人旅   加沼 鬼一 『合評会から』(番町喜楽会) 春陽子 新婚さんや団体さんは歓迎だけれど、一人旅の客はどの旅館もあんまり歓迎しない。(予約してなくて)ふりで行ったりしたら、変な部屋に押し込められて、妙に黴臭かったり・・。一人旅の感じがよく出ています。 百子 一人旅が効いてますね。部屋に案内されたら、おやおやという感じでね、うらぶれて、少々寂しい感じ。まあ私も一人旅で時々こういうのがありましたが(大笑い)。           *   *   *  侘びしい風情が漂って、いい句だなと目を止めたのだが、「畳表」というのに引っ掛かって句会では見送ってしまった。畳全体が臭うわけなんで、わざわざ畳表と言う必要はないんじゃないかと思ったのである。「黴臭き六畳間なり一人旅」などとした方がいいようにも思った。ただこうして改めて見直してみると、やはり捨てがたい。畳表がなんとなくしめっぽくて、ところどころ毛羽だったり、シミが浮いたりしているのだ。これはまさにかなりの「黴の宿」である。(水)

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