春の日に背より眠気がはいあがり   石黒 賢一

春の日に背より眠気がはいあがり   石黒 賢一 『季のことば』  陽気が良くなって来るとやたらに眠気を催す。これは生理学的にも説明出来る現象なのだという。気温の低下する冬季、動物は「休養」に入る。中には完全に休眠してしまう動物もある。とにかく冬は睡眠時間が長くなる。それが春を迎えて気温が上がり、日照時間が長くなって来ると睡眠時間をだんだん短縮し、活発に動き始めるようになる。しかし春先は眠気を調節する自律神経がついて行けず、体内時計が狂ってしまうことがあるらしい。人間も哺乳類動物だから当然こうした本性を持っている。さあ春だ早起きして活発になどと思い立っても、寝坊したり昼間にこっくりこっくり船を漕ぐ。  この句は「背より眠気がはいあがり」と、ちゃんと背筋を伸ばしていなければいけない会議か何かの最中の眠気を面白く詠んでいる。  「背」は「せな」とも読むから、「春日や背より眠気はひあがる」とした方が、「に」とか「が」という説明っぽくなる助詞が省けて句形が整うように思う。しかし作者はそんなことを考えるいとまもなく、心地良いうたた寝に引き込まれているのだろう。第5回双牛舎俳句大会入賞句。(水)

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