小枝にもずしりと重き桜かな          後藤 尚弘

小枝にもずしりと重き桜かな          後藤 尚弘 『この一句』  桜と言えば何と言ってもソメイヨシノ。明治初期にエドヒガン系とオオシマザクラの交配で生まれたというが、「何でこれほど」と呆れるほどたくさんの花を咲かせる。いったん咲き出すと花はたちまち樹木全体を覆ってしまう。「小枝にもずしりと重き」。なるほど、それもこの桜の特徴だったと気付く。  花見用のシートに座り、ワンカップの酒を飲みながら満開の桜を見上げている、というのでは、このような俳句をつくることは出来ない。立ち上がり、顔の高さにある枝の先をじっと観察していると、花の混みぐあいが見えてくる。いい俳句が作れるかどうかは、そのへんが分かれ目になるらしい。  作者は小枝の先を見ていたら、「ずしり」という言葉が浮かび、「これだ」と嬉しくなったそうである。言霊というのは場所を選ばずフワフワと飛んでいて、一生懸命に言葉を探している人の頭の中に入って行くのだという。漫然と桜を見ているだけでは、このような言葉は思いつかない、ということだろう。(恂)

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