茶を淹れて男やもめの桜もち   今泉 而雲

茶を淹れて男やもめの桜もち   今泉 而雲 『この一句』  「桜餅」に配するに「男やもめ」とは、これはまた思い切った取合わせで、まずこの奇抜さで人目を引きつける。「男やもめの無骨な手でお茶を淹れてるんですね。それが浮かんできて、実にユーモラス」(百子)という感想が句会で述べられたが、まさにそういう感じである。男やもめというどちらかと言えば美しくない冴えないものと、華やかな桜餅とのアンバランスな状景をさらりと呈示したところがいい。  俳句には「牡丹散て打ちかさなりぬ二三片 蕪村」のように、上から下まで切れ目無く一つの事物について詠んだ句(一物仕立て)と、「菊の香やならには古き仏達 芭蕉」のように一句の中に二つ三つのものを対置させて、読者の想念を広げようとする手法(取合せ、配合)とがある。取合わせは初心者でも成功する確率が高いので、しばしば行われる。  しかし、やり過ぎて両者全く無関係のものを取合わせて訳の分からない句になったり、あまりにも上手すぎて嫌味になったりする危険がある。掲出句はそのぎりぎりの線を行く、大成功例と言えよう。(水)

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