控へ目に泣く子なりけり桃の花   廣上 正市

控へ目に泣く子なりけり桃の花      廣上 正市 『季のことば』  桃は言うまでもなく春の季語。三月三日の雛祭を「桃の節句」と言い、旧暦時代の昔はこの日あたりに桃の花が真っ盛りとなった。ところが新暦の三月三日は旧暦で言えば二月初めであり、桃はまだ蕾すらはっきりしない時期である。仕方が無いから園芸農家は花芽のついた桃の枝を切って温室に入れて温め、雛祭が来たぞと錯覚させて無理矢理咲かせたものを花屋に出している。  先日、句友連れだって萩や津和野を巡ったら、行く先々でお雛様を飾っていた。おやと思ったら、旧暦で雛祭をするのだという。一昨年出かけた松山でもそうだった。これなら桃の花も自然にほころぶ。  この句、いかにも桃の花にふさわしい。この子は間違いなく女の子であろう。「控へめに泣く子なりけり」とは、なんとも可愛らしいではないか。孫俳句というものは大概はダメなのだが、これは素晴らしい。すくすくと育って、「桃之夭夭 灼灼其華」(若々しい桃、輝けるその花・「詩経国風」)そのものの娘さんになるだろう。(水)

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