地虫出づ城址の丘はまろやかに        大沢 反平

地虫出づ城址の丘はまろやかに        大沢 反平 『季のことば』  蛇、蜥蜴(とかげ)、蟇(ひき)、蚯蚓(みみず)、蟻――。地上の暖かさが地中に伝わると、俺たちの季節が来たな、と這い出てくる小動物や虫たちである。彼らが地上に出てくる有様を総称した季語が「地虫穴を出(い)づ」。それぞれも例えば、「蜥蜴穴を出づ」という風に、季語として存在している。  女性なら蛇や蜥蜴のようなものに出会えば、たぶん「キャッ」と驚き、眉を顰めるだろう。しかし「おー、出て来たか」と、彼らの到来を喜び、歓迎する人もいる。おそらく原始人や古代人の春を待つ心を引き継いでいる人たちで、俳句をやる人にはこのタイプが多い、と私は思っている。  この句、地虫の出てくる丘が「まろやか」であるという。寒い冬を耐え抜き、ようやく地上に現れたものたちへの慈しみが感じられよう。彼らの出てくる時期はもちろん春。この後も、蛇、蜥蜴、蟇、蚯蚓、蟻らは活躍を続け、それぞれが独立した「夏」の季語となる。みな我々の身近な仲間なのだ。(恂)

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