雨脚の絹糸となり雛納め           岩沢 克恵

雨脚の絹糸となり雛納め           岩沢 克恵 『この一句』  お雛様を早く仕舞わないとお嫁に行き遅れる、という。雛納めは天気のいい日に限る、ともいう。「それはそうだけれど」と若いお母さん。子供を保育園に預け、勤めに出ているから、日を選ぶことが難しい。夫は土曜日に用事のあることが多いし、どうしても日曜日になってしまうのだ。  日曜日、朝から雨だったが、仕方がない。昼過ぎ、雨はやや小止みとなったのを見定めて、お雛様を仕舞いだした。すると急に外が明るくなり、晴れてきた気配である。見ると、止み際の細かい雨がはらはらと降っている。そんな状態を、この句は「雨脚の絹糸となり」と、実に美しく詠みあげた。  「夕雲のふちのきんいろ雛納め」(鍵和田秞子)。かつて、この句に出会って感嘆した。雛納めの句はこれで打ち止めにした方がいい、とさえ思った。しかし俳句は、そんなに底の浅いものではないらしい。私は考えを変えた。これからも素晴らしい雛納めの句が、たくさん生まれてくるに違ない。(恂)

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