風呂吹にフォークを添へる六本木 深田森太郎
風呂吹にフォークを添へる六本木 深田森太郎
『合評会から』(日経俳句会)
正 最初ありえないと思った。六本木とくればありえる(大笑い)。
佳子 こういう句は明治にはなかった。今の風俗をずばり切り取ってますねえ。
万歩 風呂吹に割箸の句が二つありましたが、このフォークの句は頭で作ったのではなく実際にあったんでしょう。敬意を表して採ります。
正裕 六本木や青山には無国籍料理みたいのがありますね。この人、実際にこれ食べたんですね、スープで煮込んだような風呂吹を。
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正裕さんの言うようにスープ煮の大根であろう。フランスの家庭料理にポトフーという洋風おでんがある。牛肉の塊と大きく切ったキャベツ、丸ごとのジャガイモ、タマネギ、人参、セロリなどを長時間煮込んだもので、肉と野菜の滋味が渾然一体となっている。ここに大きな蕪を入れることもあるので、大根のスープ煮もおおよそ見当がつく。ただし、これに柚子味噌というわけにも行くまい。マスタードソースでもかけるのだろうか。ともあれ湯気に曇った眼鏡を拭きながら満足げな作者の顔が浮かぶ。(水)