うたた寝の大ぐい呑みに去年の酒        大澤 水牛

うたた寝の大ぐい呑みに去年の酒        大澤 水牛 『この一句』  この「大ぐい呑み」には覚えがある。長らく陶芸に親しんでいる作者が、昨年の秋ごろに作ったものの一つに違いない。茶碗と言えるほどの大きさだが、ふっくらとして持ちやすそうで、まさに酒器と呼ぶべき形状をしている。「あれですかね」と聞いたら、「そう、あれでやりました」という。二杯も飲めば一合か、と見当をつけていたが、「たっぷりなら、八勺くらい入るかな」という大きさである。  大晦日の夜、大ぐい呑みで七、八杯はやったのだろう。「紅白」は見たかどうか、「ゆく年くる年」が始まる頃にはつい、うたた寝をしてしまった。はっと気づくと除夜の鐘も終わっていた。ぐい呑みにはまだ半分ほどの酒が…。「一杯の酒に去年と今年が分かたれたか」と感慨を持って酒杯を見つめる作者。  「去年(こぞ)」は「今年」とともに旧年・新年の移り変わりを示す季語の一つだ。広く知られる「去年今年」を「去年」の傍題とする歳時記もある。ならば、と「去年」を句会の兼題として作った一句。俳句、陶芸、酒という、作者と切っても切れないものの三つが、みごとに綾なしている。(恂)

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