冬温し池の水面に鯉の口   井上庄一郎

冬温し池の水面に鯉の口   井上庄一郎 『季のことば』  今日五日は寒の入り。さすがに冷えてきた。これから二月三日の節分までの30日間が寒中で、一年で最も寒い時期とされている。  とは言っても時折、とても暖かで穏やかな日が巡ってくる。四日の昼間は横浜の我が家の庭は14℃にもなった。11月から12月にもこうした寒暖綯い交ぜの気温変化があり、俳句ではもっぱらそれに注目して「小春」とか「三寒四温」という冬の季語を据えている。しかし、1月から2月にかけても同じように寒い日暖かい日が循環し、やがて本格的な春の陽気に移って行く。この冬場の儲け物のような暖かい日を俳人は「冬温し」と言って、ことのほか珍重する。温いとは言っても寒中だからかなり冷えるのだが、「探梅」と称し、厚着して梅林をほっつき歩くのもこの頃である。  そうした折に池のほとりにさしかかり、鯉の群れ泳ぐのを見つけたのだろう。鯉も春の兆しを感じ取り、人の気配に餌を求めてわっと水面に浮いて来たのだ。大きな鯉が群がってやみくもに口を開けるさまは迫力がある。水面が鯉の口だらけだというところが面白い。(水)

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