初刷やマウスでめくる電子版   嵐田 啓明

初刷やマウスでめくる電子版   嵐田 啓明 『季のことば』  「初刷」とは新年になって最初に配られたり店頭に並ぶ新聞雑誌を言う。もちろん厳密に言えば去年刷られたものだが、インクの香も新しく、何となく清々しい感じがする。別刷が二部、三部、四部と重なって、元日の新聞はやたらに分厚い。その上に折り込み広告もたくさん入っているから、小さな郵便受けには入りきらず、門柱の脇に置いてあったりする。  大晦日は大概夜更かしだから、元旦は大寝坊。場合によっては年賀状と一緒に元旦の新聞を取り込んだりして、屠蘇雑煮を祝ってから、おもむろにページを繰る。ご祝儀広告ばかり多くて、読むに耐える記事はあまり多くない(そんなことを言って、昔はそれを書いていた)けれど、このどうでもいいような元旦号をめくるのが正月気分のなんとも言えないところである。  ところが近頃の若者は初刷などには目もくれない。「ネットの方が見たい記事がすぐ見れる(この「見れる」というのがまた気にくわないのだが)じゃん」という。伝統あるニューズウイークも雑誌版は廃刊、ネット版だけになったという。已んぬる哉。(水)

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