縁談のひとつ起こりて冬ぬくし       田中 頼子

縁談のひとつ起こりて冬ぬくし       田中 頼子 『この一句』  近年、日本人の晩婚化が著しい。男女とも三十歳代の未婚者は普通、四十代でも珍しくなくなっている。親たちはやきもきしているが、子供たちは平然と独身生活を楽しんでいる。かつては部下に縁談を勧めていたような立場の人たちも、いまでは独り者が多いというのだから、ただ事ではない。  この句の眼目は、縁談の「ひとつ」にあると思う。昨年の東日本大震災と大津波、原発事故によって日本は暗い雰囲気に覆われてしまった。新政権のインフレ狙いも、年金暮らしの者にとっては、非常に危ない話だ。そんな自分たちの周辺に、縁談が持ち上がったらどうなるのか。たったひとつの縁談話ではあるが、みんなが明るい気持ちになり、厳しい冬も暖かく感じられるようになる。  問題は縁談の先にあるのかも知れない。ゴールに至るまでの道のりは、そう簡単ではない。若い人たちはとかくドライで気まぐれだ。結婚指輪を交換しても、ご破算にしてしまうことがあるという。俳句の中のことだけれど、この縁談、うまくいってもらいたい、なんて思ってしまったよ。(恂)

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