ベンチごとに老人ひとり冬日向       大倉悌志郎

ベンチごとに老人ひとり冬日向       大倉悌志郎 『この一句』  公園だろうか。団地の広場かも知れない。ベンチが点々と置かれている。二つ三つが隣合わせなってよさそうなものだが、ベンチは周囲に一定の広さを確保し、個を主張しているかのようだ。公園でそんな情景を見たとき、暗くなると一組ずつの若い男女が座を占めるのだろう、と思ったことがある。  ところが一つのベンチに老人が一人ずつとは、虚をつかれた思いがした。私はまだ見たことがないが、その様子は十分に想像できる。顔見知りならともかく、話したことのない人とベンチで一緒になるのは煩わしい。一人で十分なスペースを確保し、孤独を楽しむのも悪くはない。  何十年も前に開発された大型のニュータウンなどでは、住民の高齢化が言われている。三十代、四十代で入居した人々が一斉に高齢化した。妻とか子供のことは想像にまかせよう。ともかく仕事を離れて自由になった人がベンチで日向ぼっこをして……。どうも男性ばかりが頭に浮かんでしまう。こういう中に、高齢ながら美しい女性が一人座っていたらどうか、なんて考えてしまった。(恂)

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