望郷の花と思へり帰り花         宇佐見 諭

望郷の花と思へり帰り花         宇佐見 諭 『季のことば』  「帰り花」「返り花」という言葉がいつ頃からあったのか分からない、と古い歳時記にある。もともとは中国の「狂花」があり、日本で「狂い花」「狂い咲き」と用いられているうちに「帰り花」が生まれたらしい。日本的、あるいは俳句的なセンスによる見事な言葉の創造、と言えよう。  俳句の作品で言えば、少なくとも芭蕉以前から「帰り花」の句は作られていて、歴史的にけっこう人気の高い季語になっている。もし「狂い花」「狂い咲き」という語しかなかったら、どうだろう。小春日の頃、気まぐれに咲く花が、これほど注目されることはなかったのではないか。  上掲の句の作者は柔道経験者主体の「三四郎句会」に今年から参加して、俳句を始めたばかり。「帰り花」という言葉も初めて知って、句を作ったようだ。「田舎にも咲いていたな」という記憶をそのまま詠んだのだろう。番町喜楽会との初めての合同句会では、二人のベテランから「作者と帰り花が一体になったような感じがする」「望郷なんて言葉、なかなか出て来ないものだ」と、お褒めの言葉を頂いた。(恂)

続きを読む