年の瀬や床屋で受くる蒸しタオル 岡本 崇
年の瀬や床屋で受くる蒸しタオル 岡本 崇
『合評会から』(番町喜楽・三四郎合同句会)
賢一 気持ち良さそうですね。実感で頂きました。
白山 これは年の暮れでないといけませんね。どの月であろうと床屋の蒸しタオルは気持がいいが、やはり年の瀬にとどめを刺す。うまいもんですね、これは季語が動きませんねえ。
てる夫 この床屋の蒸しタオルの気分というものは女性には分からないんじゃないかと思いますねえ。ことに年の瀬の慌ただしい一時を逃れて、床屋で息をつく。これがいいんですよね。
大虫 そう、ほっと一息という感じがよく出ています。
* * *
気忙しい年の瀬だからこそ、「床屋の蒸しタオル」が一層有難いものに感じられる。もう大掃除も賀状書きも済ませての散髪だろうか。それではちょっと優等生過ぎる。何もかも積み残し、結局は「ええい、もう全部年越しだ」と開き直って、床屋に出かけたと取った方が断然面白い。蒸しタオルを被されて、極楽往生である。(水)