塩鮭になほ塩振って老いを知る   大沢 反平

塩鮭になほ塩振って老いを知る   大沢 反平 『この一句』  句会では「老人の生態をよく掴んでいる。老人には甘塩鮭は物足りないんでしょうね」という感想があった。塩分摂取過多が忌み嫌われる昨今、塩鮭製造販売業者としては少しでも「減塩・甘塩」を謳って売上げを伸ばそうとする。しかし、これが折角の塩鮭の美味さを損ねているのだ。  辛くない塩鮭なんて本来はおかしい。きつい塩によって鮭の持つ旨味がより一層引き出されて来ることだってあるに違いない。そんな思いがあるから、焼いた塩鮭に塩を振ったりするのだ。「女房が台所に行った隙にささっと塩を振る。それがばれて怒られています」と作者は頭を掻いている。  しかしこの作者はまだいい。塩を振ったことを、「ああ、年取って味覚器官が衰えたせいかも知れないな」と分析しながら、自らの老いを噛みしめている。これがもっと進むと、塩を振っていることを忘れてしまい、一瓶全部振りかけてしまったりする。こういう俳句が詠めるうちはまだまだご安心というところである。(水)

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