新海苔に息災のふみ添へられて       岩沢 克恵

新海苔に息災のふみ添へられて       岩沢 克恵 『この一句』  新海苔が送られてきた。包みの中に「皆様、お変わりありませんか。私たち夫婦も御蔭さまで……」というような手紙が添えられていた、という句。一読、「ああ、いいなぁ」と思った。しかし、なぜ新海苔と息災の文がいいのか、と考えるとすぐに答えは出ない。親しい人の近況が、新海苔の香のように漂ってくるから、などと理屈をつけてみたが、どうだろうか。  句会では「被災地から送られてきたのではないか」という感想があって、「えっ」と思ってしまった。海苔と言えば浅草、と思う世代だから、現在のことを知らなかったのだ。はてな、東北も産地だったのかな、と調べたところ、宮城県松島湾で質のいい海苔が生産されていることを知った。  なるほど大震災、大津波の被災地からの贈り物とも考えられる。そうであれば訴える力が余計、強くなる。しかし産地を特定する必要はないかも知れない。いまでは有明海や瀬戸内海沿岸など多くの名産地があるという。この句から、人それぞれが「心の産地」の香を感じ取ればいいのだろう。(恂)

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