薄暮にも球追ふ子らよ冬浅し   山口 斗詩子

薄暮にも球追ふ子らよ冬浅し   山口 斗詩子 『この一句』  一昔前までなら、これは子供野球で間違いない。しかしサッカーが大流行の昨今では、夕闇迫る中でサッカー・ボールを追いかけ回す光景と取った方が普通かも知れない。ただこの句の場合は、草野球でもサッカーでも、どちらを思い浮かべてもいいだろう。分刻みで暗くなってゆく初冬の野原で、無我夢中になってボールと戯れる子どもたちの様子、というのが眼目なので、球技の種類なぞ何でもいいのだ。  「もう一回裏表やろうと頑張っている感じ」という句評を述べたのは、自分の子供時代の草野球を思い出した人だ。「ボールを取ったり取られたりして、暗くなるのにも気づかない」と言ったのは子供につられてサッカー・フアンになった人の今日的解釈だ。  こんな風に読者にいろいろに受け取られる句というのは、意味があいまいで、普通はあまり良い事とはされないのだが、この句はかえって自由で大らかな感じを与える。(水)

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