蟷螂の鎌をもたげて轢かれをり         嵐田 啓明

蟷螂の鎌をもたげて轢かれをり         嵐田 啓明 『この一句』  自動車、自転車……、乳母車にだってカマキリは轢かれてしまう。しかし、ぺちゃんこになっても鎌(斧?)を掲げ、強烈な抵抗の意を示しているところがすごい。これぞまさしく「蟷螂の斧」。アスファルト道路、土の道の轍の中などにカマキリの死骸を見れば、人それぞれに思うことがあるだろう。  カマキリのように、自分の意思をさまざまに示せる虫が他にどれくらいいるのだろうか。アリやミツバチは餌を取ったり、巣を作ったりしているが、あれは個の意志の働かぬ集団行動と見るべきだろう。トンボやクモはどうか。自分で餌を捕食しているが、意志が感じられるのはせいぜいそこまでだ。ところがカマキリは人間にも立ち向かう気力を示し、死してなお抵抗の精神を失わない。  句の評に「現役時代のおのれの身を思い出し、切なくなりました」というのがあった。評者は女性であった。「カマキリ爺さん」なんて呼び名もあり、オスの印象の強い虫ではあるが、抵抗するのはメスなのかも知れない。オスのカマキリは結局、メスに食べられてしまうのだけれど。(恂)

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