谷あひの所を得たり蕎麦の花      堤 てる夫

谷あひの所を得たり蕎麦の花      堤 てる夫 『この一句』  このところ蕎麦の花を見ることが多くなった。列車や車に乗っている時、「あっ、蕎麦の畑だ。きれいだな」と思うのだが、何となくしっくりこない。黄金色に稔った田の一角に、四角く切り取った蕎麦畑を見ていて、あ、そうだったのか、と気づく。目にしている多くの蕎麦畑は休耕田だったのだ。  政府の減反政策によってどれくらいの休耕田が生まれているのか、正確には分からないが、蕎麦畑がその一端を表していることは確かだろう。この政策の是非は問わない。使わない田んぼを蕎麦畑に利用するのは大いに結構、と言うほかはない。句会の兼題に「蕎麦の花」が出たときなどに、気軽に見に行くことができる。地元産の蕎麦粉を用いた蕎麦にもありつく機会も多くなるのだろう。  とはいえ、蕎麦は痩せた土地の作物、というイメージが出来上がっている。山畑に広がる白い花は、その土地の象徴とも言えよう。「蕎麦の花」という季語は、われわれが代々受け継いできた思いとしっかり結びついているのだ。「谷あいの所を得たり」。まさにその通り、うまいこと言うなぁ、と思う。(恂)

続きを読む