新米の湯気を吸ひ込む朝餉かな   来間 紘

新米の湯気を吸ひ込む朝餉かな   来間 紘 『この一句』  新米は実に美味しい。越後魚沼のコシヒカリ特等などという目の玉が飛び出るほどの高値のものでなくとも、獲れたてで精米したての新米はどこ産であろうと美味しい。この句はその感激を素直に、具体的に詠んで、読者の共感を呼ぶ。しかも新米御飯を食べる前を詠んで、わくわく感じている様子を伝えたところがいい。  朝食の膳に向かい、茶碗にご飯をよそってもらう。湯気が顔に当たる。なんともいい香りではないか。女房殿が「新米よ」とのたまう。そうなのか、もうその季節なんだな、そう言えば大通りのスーパーの店頭に新米の幟が立っていたのを思い出した。季節の移ろいを感じるきっかけがなかなか掴めない東京で、「新米」は数少ない秋を告げる役者である。  とにかく、良い香りを十分に楽しみ、一口含む。噛むと口中に甘味が広がる。このところしきりに老いを意識するようになったのだが、これでなんとなくまた力が湧いて来るような気がしてきた。(水)

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