朝顔や早起き苦もなし得もなし    杉山 智宥

朝顔や早起き苦もなし得もなし    杉山 智宥 『この一句』  若いころ、早起きは何であんなに辛かったのだろう。目覚ましが鳴ると、必死で起きなければならなかった。学校に遅れる、の年代が終われば、会社に遅れる、となり、朝、定時に起きることが人生の苦行の第一と思っていた。これを一週間のうち五日は続けて、日曜日の朝はこんこんと眠る。  小学校の頃から母親に「早起きは三文の得」と言われ続けていた。夏休みくらい、ゆっくり寝ていたいのに、「ラジオ体操に行きなさい」と起こされる。「三文の得なんていらないよ」とふてくされ、目をこすりながら運動靴を履いて出かける。あんな日々はもう、どこかへ消えてしまった。  定年退職となり、自由な時間を存分に得たとたん、不思議なことに何の苦もなく早起きができるようになった。それどころか布団の中に長くいることが辛くさえなってきた。やむなく起きて、朝顔に水をやったりしている……。こんな状況を考えながら一句を読み直してみると、ユーモアの中にそこはかとないほろ苦さを感じてしまう。俳諧味とはこのようなものを言うのだろうか。(恂)

続きを読む