夕立や広重描く人となり   久保田 操

夕立や広重描く人となり   久保田 操 『この一句』  言うまでもなく広重の「名所江戸百景」のうち「大橋あたけの夕立」を踏まえた句である。この絵は浜町から対岸深川の幕府の籾蔵前にかかっていた新大橋(現在の位置よりは200㍍ほど下流)の夕立風景を描いたもので、画面下三分の一を大胆に横切る橋と、対岸の安宅(あたけ)と呼ばれる岸辺の線が区切った三角の空間が満々と青い水をたたえた隅田川という構図。画面上方は黒雲に覆われた空。そこから降って来る驟雨の黒い線が、傘をすぼめ裾をからげて橋上に右往左往する人たちを叩く。この斬新な構図と生き生きとした人の動きに感動したゴッホがこれを懸命に模写した絵が残っている。  夕立は初夏から晩夏まで夏中を通しての季語ではあるけれど、まあイメージとしてはむくむくと盛り上がる入道雲とともに、七月から八月にかけてのものである。ところが今年のお天気はことのほか荒っぽく、五月に入って立夏を迎えるころから雷や雹を伴った夕立がしばしば訪れた。広重描く人物があちこちに輩出する大騒ぎである。(水)

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