屋外に椅子を持ち出す夏はじめ   大下 綾子

屋外に椅子を持ち出す夏はじめ   大下 綾子 『この一句』  きのう今日の日中汗ばむような初夏の感じを素直に詠んでいる。晴れ渡り、そよ風が吹いている。ディレクターズチェアと言うのだろうか、キャンバス張りの折りたたみ椅子をベランダに出して、それに身をゆだねる。あれこれ考えなければならないことはいくつかあるのだが、一時、それらを忘れて、何も考えずに目をつむる。あくせくしていた自分がおかしく思えるような、伸び伸びした気分に浸る。  もしかしたらこの句はそんな意識は何も無く、ただ気持の良い初夏を迎えたから、家の外に椅子を並べたということを詠んだだけなのかも知れない。  それはどちらでもいいだろう。とにかく、初夏という季節は椅子を家の外に持ち出すような気分にさせるものなのだ。句会では「屋外に」という言い方がちょっと固くて違和感を抱くという意見があった。確かに「ベランダに」とか「庭先に」などと言った方が読む者の頭にすっと入って来るかも知れない。そういう二次的な表現に対する注文はつくかも知れないが、まずは「初夏」の気分を素直に表した佳句として称揚したい。(水)

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