頭髪も生垣並みや夏初め   堤 てる夫

頭髪も生垣並みや夏初め   堤 てる夫 『季のことば』  この句の季語は言うまでもなく「夏初め」だが、実はもう一つ「剪定」という季語が隠されている。桃、梨、ミカン類などの果樹や庭園樹、生垣などは芽吹きが盛んになる晩春から初夏を控えた頃に、徒長した枝や混み合ったところを刈り込む。こうすることで新たな芽吹きを促し、実つきを良くするのだ。だから「剪定」は春の季語なのだが、さっぱりした姿を眺める頃はもう初夏である。  この句はかなり複雑なことを詠んでいる。五月初めの夏を迎えた時期を言い、刈り込まれてすっきりした生垣を眺め、夏らしく思い切って短くした自らの頭髪を述べて、颯爽たる気分をうたいあげた。普通ならきちんと刈り込まれた生垣を描写するに留め、それに夏初めという季語を添えて一句に仕立てる。その方が上品で行儀の良い句になる。それを、「頭髪も生垣並みや」と弾む気持まで盛り込んでしまった。俳句作法としては冒険だが、これで単なる抒景句が叙情句になった。この欲張りが俳諧味になっている。(水)

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