見えぬ手に誘はれ歩く朧かな   山田 明美

見えぬ手に誘はれ歩く朧かな   山田 明美 『この一句』  句会の合評会で「最初はちょっと分からなかったが、『見えぬ手』は色々考えさせられる。自分の悩み事とか、考えながら歩くとか、朧の中を歩きたい理由付けに『見えぬ手に誘はれ』とは、面白い言葉を考え出したなと感心した」(二堂)という感想が述べられたが、これに尽きると思う。  何も信仰心が篤くなくとも、「見えぬ手」に導かれているような感じになることはよくある。ましてや朧夜である。朧とは夜間の霞を言う。空気がなんとなく湿った感じで、月がヴェールをかぶったようにぼうっとかすんで見える。街灯も川面も海の波もぼんやりとにじんだようになり、時には遠くの鐘の音まであやふやな感じに聞こえる。  そういう中を歩いていると、頼りない気分にもなるが、なんとなく温かく、すべてが懐かしく思えたりする。これが春の宵の「おぼろ」というものだ。気象学ではこの現象も明快に科学的解釈を下すのだろうが、俳人はそれを感性でとらえる。(水)

続きを読む