白躑躅天の蒼さに冴えわたる      久保田 操

白躑躅天の蒼さに冴えわたる      久保田 操 『この一句』  青空に花を配した句というと「まさおなる空よりしだれざくらかな」(富安風生)をまず思い出す。実に印象深い情景を、いとも軽々と詠んでいるが、この句を知った後も、同じような句はもう詠めない、とは思わない。名句を目標にして何度も何度も挑戦するのが、俳句作りというものだろう。  北斎や大観の富士の名画があっても、何千、何万という富士の絵が描かれ続けている。俳句もそれと同じことだ。この句は白躑躅(しろつつじ)を蒼い空の下に置いた。紅の躑躅で似たような句を見たことがあるが、白にはさえざえとした感じがあり、別の美しい世界が生まれている。  紅躑躅の野生種から、まれに白色が生まれるという。おそらくそれらが改良され、白の園芸種になったのだろう。紅躑躅は丘を埋めるほどにもなるが、白躑躅は庭の一隅を占める、という感じである。白い花が緑の葉を覆い尽くすようにこんもりと盛り上がり、空の青さを受けて、さらに白く冴え渡っているのだろう。白躑躅の周辺にいるのは作者だけのようだ。句からひっそりとした感じが伝わってくる。(恂)

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