ガン告知されて見上げる夕桜   須藤 光迷

ガン告知されて見上げる夕桜   須藤 光迷 『この一句』  句会の選句の時点では当然誰の句だか分からない。句座に連なる一同はっとして「いったい誰なんだろう」と思った。年配者の多い句会だから、既にこうした経験を持つ人もいるし、そうでないまでもあちこち傷んでいる人が多い。こういう句が出て来ると、どきっとしてしまうのだ。身につまされて思わず採ってしまうということもあるのだろう、この夜の句会の最高点となった。  それにしても「見上げる夕桜」とは、出来過ぎと言った方がいいくらい出来ている。花びらがぼーっとにじんで見えるのは、夕靄のせいだろうか、呆然としてうるむ我が眼のせいか。私にはまだこうした経験は無いが、そうなった時には多分こういうことになるのだろうなと思う。  この日はたまたま欠席だったが、前の日も皆と元気に顔を合わせていた光迷さんと分かって、驚いた。ガン告知そのものは事実だけれど、幸い進行も遅く、治療を続けていればしばらくは問題はあるまいと言われたと聞いてほっとした。  とにかくこういう句を発表するのには勇気がいる。よく投句してくれたなと思う。(水)

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