墨提の春の日統べて天空樹       吉野 光久

墨提の春の日統べて天空樹       吉野 光久 『この一句』  墨堤(ぼくてい)の春の日統(す)べて天空樹(スカイツリー)。「墨提」は隅田川の堤、「統べる」は、支配するの意味。さて、「天空樹」という新語をご存じだっただろうか。実は中国語ではスカイツリーを「日本天空樹」あるいは「東京天空樹」と書くのだという。しかしこれ以外にも「東京晴空塔」などがあって、中国の国家機関が認めた公的な固有名詞ではないようである。  中国人に感想を聞いたところ「天空樹は直訳ですね。可口可楽(コカコーラ)のようなセンスに欠けている。中国人にはまだ広く知られていないし、一般的な呼び名になるかどうか」ということであった。しかし日本人にとって、特に俳句愛好家にとって、とてもいい漢訳と言えるのではないか。  「天空樹」には「スカイツリー」のルビが振ってあったのだが、「てんくうじゅ」と読んだ方がいい、という意見があった。私も賛成である。五七五にすっきりと納まるし、語感も悪くない。これから「天空樹」の句がたくさん出てきそうだが、この句がその第一号? 少なくとも先駆けと言えるだろう。(恂)

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