蛇穴を出て吊り橋に架かりをり    岩沢 克恵

蛇穴を出でて吊り橋に架かりをり    岩沢 克恵 『季の言葉』  蛇はいろんな種類が一つの穴に籠って越冬するようである。建設・土木関係者から「崖や斜面などを崩すと、アオダイショウ、シマヘビ、ヤマカガシ(これらの名が正しいとは限らない)などがいっしょになって冬眠している」と聞いたことがある。「マムシは見たことがない」とも言っていた。  春になって地中の温度が上ると、彼らがぞろぞろと地上に姿を現してくる。これを季語としたのが「蛇穴を出(い)づ」。今年は寒い日が続いて、なかなか穴を出るわけにはいかなかっただろう。とはいえ、梅の香りもほんのり漂うこの頃、己が季節の到来を感じているのではないだろうか。  この句の蛇は穴を出て、吊り橋を渡ろうとしていた。「架かる」にはいくつかの意味があるが、この場合は「ぶらさがる」「垂れ下がる」だろう。吊り橋の手すりに蛇がぶら下げっていたのである。山ガールらの一行が来た。狭い吊り橋を渡って、深い谷を越えなければならない。先頭の女性は橋の半ばで立ちすくんだ。前に蛇、後ろには仲間。まさに「進退これ谷(きわ)まった」のではないだろうか。(恂)

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