朝の東風絵馬の三千打ち鳴らす     玉田春陽子

朝の東風絵馬の三千打ち鳴らす     玉田春陽子 『この一句』  この時期、絵馬と言えばもちろん「合格祈願」「学問成就」。それが三千枚となれば、東京では学問の神様、湯島天神(湯島天満宮)以外になさそうだ。受験生や親たちの人気は抜群で、あまり広くない境内が満杯状態になることもあるらしい。願いを込め、結びつけられた絵馬のボリュームがもの凄い。  作者によれば、「白髪三千丈」など中国式の誇張に倣ってのことというが、実際のところ、その数「万」を超えていると思う。所定の場所に結ばれた絵馬の集合体は背丈より高く、幅は両手を広げたより広く、横長に連なっているのが何カ所か。しかしこの句は実際がどうの、と論じても意味がない。  「絵馬の三千」とは、いかにも俳句的で、魅力的な表現である。こう詠んだことによって、数字が前面に押し出され、虚実を超えた存在感が生まれた。三千も一万も固まっている絵馬はどっしりとしていて、東風くらいでは鳴りそうもない。しかし「打ち鳴らす」という語の勢いによって、そうなのだ、と思ってしまう。絵馬は朝の東風に揺すられて、「合格、合格、合格」と響き合っているのだろう。(恂)

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