あたたかやどこまで伸びる亀の首   堤 てる夫

あたたかやどこまで伸びる亀の首   堤 てる夫 『季のことば』  「暖か」は春の季語。二月から三月はじめはまだ寒い日が続くが、時にぽかぽかと暖かい日が訪れる。するとまた寒くなり、暖かくなりして本格的な春になる。「三寒四温」は俳句では冬の季語だが、これは中国大陸の初冬の様子を表した言葉が暦と一緒に取り入れられたもので、本来、我が国では「三日寒い日が続くと四日暖かい」というのは春先の気象変化を言うにふさわしい。  この句はぽかぽか陽気の日の名園散策であろうか。大きな池の中の石に亀が日向ぼっこしている。まるで置物のように動かない。「あれは本物の亀かな」「いやあ、石の作り物だろう」なんて言い合っていたら、亀が首をにゅうっと伸ばした。「おやおや聞いていたんだな」と大笑いになる。  精一杯伸ばしたって亀の首の長さは大したことはないのだが、甲羅の中に引っ込めていたのをぎゅっと伸ばすと、いったいどこまで伸ばす気なんだと思うほど長く見える。まさに全身で伸びをして春の到来を喜んでいる気分にあふれている。見ているこちらもすっかり長閑な気分になる。(水)

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