二月逃げ一年も逃げ始めたり   今泉恂之介

二月逃げ一年も逃げ始めたり   今泉恂之介 『この一句』  毎年二月の末になるとこの句を思い出す。この作者には名句がたくさんあり、この句が特に抜きん出ているというわけではないのだが、六、七年前の句会にこれが出てきた時、その機知と諧謔に感心した。今読み直してもつくづく「そうだなあ」と思うのである。読む者にそう思わせてしまうのは、句にそれだけの力があるわけで、つまり名句の資格を備えているということであろう。  二月という月はほんとにあれよと言う間に過ぎてしまう。一月は年の初めでいろいろな行事があり、華やかな気分に満たされる。故郷を持つ人は久しぶりに実家の両親や親戚縁者との往来を楽しむ。若者は着飾って新年行事に出かけ、センター試験だ就職内定会社の集まりだと、忙しくも楽しい時を過ごし、将来の思い出を積み重ねる。しかし二月は何と言うこともなく日がたってしまう。まさに「逃げる」という感じで終わってしまうのだ。  そして三月になれば四月の年度始めを控え、世の中が目まぐるしく動き出す。もう二ヶ月が消えてしまい、一年が逃げ始めたのである。(水)

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