灯ともせば一輪咲きぬ冬の梅         笹本 塘外

灯ともせば一輪咲きぬ冬の梅         笹本 塘外 『季のことば』  「冬の梅」は春を待たずに咲いた普通の種類の梅のこと。今年は寒く、東京あたりでは梅の開花が遅れているようだが、年によっては一月末から二月の二三日まで、つまり立春前にぽつりぽつりと咲き出すのもある。枝に丸い蕾が膨らみ、ふと気づくとたった一つ、花びらを広げていたりするのだ。  夕方、暗くなったので廊下の灯をつけたのだろう。窓ガラスの向こうに何か白いものが見える。おっ、梅かな、と目を凝らすと確かに一輪咲いている。そうか、節分は明日だから、これは冬の梅なのだな、と作者はうなずく。満開の梅もいいが、このときの嬉しさは格別だったのではないだろうか。  この句、「灯ともせば」のあとに「一輪咲きぬ」と続けて、原因と結果を表す詠み方をしている。灯りをつけたから、梅が咲いた、というわけである。そんなこと、実際にはあり得ない。しかし敢えて「咲きぬ」と言い切って、この句に素晴らしいパワーを生みだした。一輪見つけた、一輪咲いていた、では当たり前のことだ。梅の花を愛する人が目をやったときに、この花は咲くのである。(恂)

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