音立てて酷寒の雲海に落つ   直井 正

音立てて酷寒の雲海に落つ   直井 正 『季のことば』  厳寒、酷寒、極寒、厳冬、いずれも一月末から二月初めにかけての大寒のピーク、寒さも極まった頃を言う。字を見るだけで、また「ゲンカン」「コッカン」という響きからも震えを覚える。日経俳句会勉強会の席題にこの季語が出され、即吟した中で最高点を得た句がこれであった。  「雲が音を立てて落ちるわけはないんですが、厳寒の雷を伴って雪を降らせるような雲を感じさせる」「厳寒、酷寒という言葉には音立ててという感じがしますよ」「なんというか、神々の黄昏というか、壮大な景色でいいですね」と、ワグナーまで引き合いに出されるほどの絶賛を博した。  作者によると真冬の日本海の光景だという。厚い黒い雲に覆われ、やがて「鰤起し」と言われる寒雷を伴う雪やみぞれ混じりの烈風が吹きすさぶ。正直なところ私は、「音立てて」「酷寒」と来て「雲海に落つ」と、あまりにも大げさな詠みっぷりに少々辟易したのだが、今じっくり見直すと北日本の過酷な冬景色がまざまざと浮かんで来るのである。(水)

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