水仙の香り賑やか寛永寺       池村実千代

水仙の香り賑やか寛永寺       池村実千代 『季のことば』  野生の水仙(ニホンズイセン)は球根が海流に乗って中国大陸から到来した、という説がある。日本海側に広がっているのはおそらくそのためだろう。海辺の崖に咲く様子などが俳句に多く詠まれてきたが、それらは花の数が少なく、倒れ伏す葉の中に数輪が見える、というような状態だ。  一方、公園の花壇などを飾る水仙は文字通り咲き誇る感じで、野生種とは雲泥の差を思わせる。日本の野生種を改良したものか、輸入種なのだろうか。いずれにせよ真っ白い花弁やその中の黄色い部分が実にあでやかで、しかもたくさん咲く。昨年、ある公園で見た水仙は花壇全面を覆うかのように咲き乱れており、いままでに体験したことのないほどの強い香りを漂わせていた。  あの香りをどう詠んだらいいのか、と時々考えていたのだが、「香り賑やか」の表現に出会って、「これだ」と膝を打つ思いがした。徳川家の菩提寺の上野・寛永寺は、維新の頃に隆盛を失った。あの境内の一角に芳香を放つ水仙の花壇があるのだろう。久しぶりに寛永寺に行ってみようか、と思った。(恂)

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